写真左から:篠田智仁、佐藤良成

20周年を迎え、初の2枚組ベスト・アルバムをリリースしたCOOL WISE MAN。彼らの音楽を愛してやまない面々に会いに行き、たっぷり話を訊こうというスペシャル企画、第二弾!
2011年の下北沢インディー・ファンクラブでのコラボレーションをきっかけに意気投合、昨年6月にはアルバム『ハンバート・ワイズマン!』をリリース。その後、全国ツアーを一緒に回るなど、もはや兄弟バンドと言っても過言ではない、ハンバート ハンバートの佐藤良成と、COOL WISE MANのリーダー/ベーシスト篠田智仁のよるガップリ四つ対談! だったのだが、やっぱり酒がすすんでしまい、その場に同席したスタッフ陣もガンガン話に割り込んできて、取材現場は予定外の〈大宴会〉に……。

──クールワイズマンとハンバート ハンバートは、アルバム『ハンバート・ワイズマン!』を昨年6月にリリースしてから、フジロックをはじめとするフェスへの出演と、全国ツアーを行いました。ツアー・ファイナルのリキッドルームを観に行って、やっぱりすごくいい組み合わせのコラボだなって思いましたし、絶対これだけで終わらせちゃ駄目でしょって思って(笑)。観ている側としても素晴らしい内容でしたが、CWMとハンバートそれぞれとっても、このコラボで得たものは大きかったんじゃないですか?

佐藤大きかったですね。

篠田うん、大きいよ。あれは。

──僕の回りのスカ好きの面々も軒並みいい反応でしたね。歌モノのスカで久しぶりに出た名盤って、みんなこぞって評価してました。

佐藤うれしいですねぇ。

篠田やっぱりスカの歌モノって、スカ・バンドが自分たち発信でやると、目に見えない決まったマナーみたいのがでてしまいがちなんですよね。ハンバートは歌モノの中でも独特の物語を作れる人たちだから、CWMみたいにスカばっかりやってきた人たちと混ざった時に、今までなかった感じの歌モノスカになった。だけど、それも計算とかじゃないんですよ。最初、この組み合わせでやったら面白いかなっていうのは、お互いのスタッフが考えたことだったしね。

──今日はお互いのマネジャーやスタッフも同席してるので、自由に発言してもらおうと思うんですが……そもそもハンバートとして、CWMと一緒にやろうと思った一番の決め手はなんですかね?

ハンバート ハンバート マネジャー山口一番の決め手というと……ハンバートは基本静かな音楽なんで、お客さんがスタンディングしてくれないんですよね。

一同(爆笑)

──まぁ、そういう性質の音楽でもないですからね(笑)。

山口でも、そこでライヴの醍醐味を味わえないっていうジレンマも常にあったんですけど、CWMと共演することで、その解決策をひとつ見つけたっていうのが大きいですね。

篠田良成くんは、ハマちゃん(浜田光風)が同じ高校の先輩後輩っていうつながりだけで、話をもらった時も名前ぐらいは知ってたけど、正直、ハンバートがどういう音楽やってるのか、あんまり知らなかったから。で、釣りしてるときに長崎君から「ハンバート ハンバートって人たちがいるんですけど、コラボレーションしないかって話があるんですけどどうですか?」みたいに言われて。俺も釣りしながら「いいじゃんいいじゃん」みたいに返事して(笑)

佐藤それ、半分話聞いてないじゃん(笑)。

篠田いや~(笑)、でも最初そうだったんだよね。

CWM所属レーベルGalacticオーナー長崎ある意味慎重に進めたい話を振る時に、あえて釣りをしながら話してみる、ってところはありますね。接待ゴルフみたいに(笑)。

佐藤ある意味、心を許してる時だもんね。

篠田帰りに音源とか資料を渡されたわけですよ。で、「おなじ話」を聴いてみたら、なんていい曲なんだ! って、ビビったんだよね。

佐藤(大笑)

篠田やっぱり、その名曲をやりなおすって怖いんですよ。リコ(・ロドリゲス)と共演した時もそう思ったけど、それが中途半端な評価になったらハンバートにも申し訳ないから。

佐藤コラボとはいえ、結局はカバーすることになるからね。

篠田そうそう。とにかく試しに一回アレンジしてみようってロックステディにアレンジして演奏してみたら、コード進行含めてバッチリだった。それを良成くんたちもいいって言ってくれて、これはやれそうな気がするって確信してきた。

佐藤そうなんですよ。CWMが一度リハで試しにやってみたオケだけのデモテープを渡してくれて。その時は、メンバー全員とまだ一度もあってない段階だったけど、その「おなじ話」が本当に良かったんだよね。うわ、何これ! ってビックリした。僕らの曲には2ビートでスカのリズムで合う曲が意外と少なかったんですよね。だから具体的なイメージもなく曲渡して丸投げしたのに、こっちがビックリするくらいにハマってたから。〈この曲、昔からあったじゃん〉って勘違いしちゃうぐらいに、あまりの馴染みっぷりでね。

篠田もちろんハンバートのオリジナルの方が好きだって人もいると思うけど、CWMをよく聴いているような人たちが、「おなじ話」を聴いて、なんていい歌だって感じてくれた反響がかなりあったから、それは本当にやってみてよかったと思うよね。一緒にやった「おなじ話」は踊れるし、泣ける。マーヴィン・ゲイじゃないけど、それは最高なんですよ(笑)。ただ、ソウルっぽくアレンジするのはちょっと違う。本当にロックステディの素朴さがハマったよね。音も詰まり過ぎてないところも。

佐藤静かな曲をああいう風にしたことで、スローなまま立って踊りながら聴けるっていう。まさかロックステディにしたらこんなにハマるってことは、この曲を作った時から今まで一度も思いつかなかったけど、これだ! っていう正解に行き着いた時の感動がありましたね。もちろん、これはすごく上手くいった例で。器用なミュージシャンたちだったら、どんな曲でも何とかしちゃうところだけど、僕ら不器用だから、何とかならないんですよ。0か10かみたいな(笑)。

篠田0あったねぇ~「サマーヌード」(笑)。

佐藤あれは明らかに0だった(笑)。

──真心ブラザーズのカバーも、コラボの候補に上がってたんですか?

篠田そうだったんだけど、ソウル調なアレンジで、俺らが全然出来なくてね。

佐藤それで結局「サザエさん」のエンディング曲と「ランナウェイ」(シャネルズ)のカバーなって(笑)。でも、「ランナウェイ」やってみて、やっぱりこっちだ! って気付きましたね。普段の自分たちにすんなり入ってきたというか。

──今、話題に出てたカバー曲も含めて、フェスやツアーではアルバムの曲以外にもレパートリーが増えてましたね。

山口最初ハンバート・ワイズマンでワンマンが決まってたんですけど、CD5曲しか入ってないのに、ワンマンやれるのか? って思いましたよね。

一同(爆笑)

山口他のネタ出しても7曲ぐらいだから、いっそ前半後半に分けて、ハンバートやってCWMやって、最後一緒にやるとかじゃないと無理でしょうって考えてたんですよね。ただ、その間にNHKの『ライヴビート』って番組で70分くらいやらなくちゃいけなくて、急遽レパートリーを増やして無理矢理やったら、これが結構出来たんですよ。そこで、これはいけるなって。

篠田沢山リハやらなくても、一回ぐらい合わせられればハマる曲は出来るかなというのがありましたね。

山口「Monkey Man」とかそうでしたよね。

佐藤いや、あれぶっつけだったから!(笑)。「Monkey Man」どこで初めてやったんだっけかな? あ、フジロックだ!トゥーツがでるから、これ絶対にこの日にやらなきゃならないって話になったんだよ。

FUJIROCK FESTIVAL'12 超満員のFIELD OF HEVEN、初日のこのステージでは一番の動員ということだった。

──僕もフジロック行きましたけど、その日だけでいろんなバンドが「Monkey Man」やってて、都合4回ぐらい聴きましたよ(笑)。

佐藤「Monkey Man」は絶対に出来るからっていって、俺が歌詞だけ作ったんですよ。

篠田俺もメンバーに「Monkey Man」出来なかったらお前等クビだっていったからね(笑)

──スカ・バンドで「Monkey Man」出来ないのは確かに問題ですよね(笑)

佐藤ベタ過ぎるかなってのはあったんだけど、すごいよかったよね。

篠田うん、すごくよかった!

──「Monkey Man」もそうだし、アルバムに収録されていない曲も演奏されたことで、ツアーでこの〈バンド〉の広がりが見えた感じはありますよね。

佐藤そうなんですよ。毎回ライヴの度に、リハの度に新しい曲を2、3曲入れて。でもリハも少ししか出来ないからライヴの間があいたら1回だけやるみたいな感じで。そのレベルなので、当日の楽屋で「キーはGで、あそこ3回まわしだよね」みたいに打ち合わせながら、どんどん曲を増やしていったんです。

篠田CWMはそういうのあるんですよ。リハもそんなにやらずに、楽屋で俺らが必死に覚えて……まあ必死でもないんだけど(笑)。それで、軽く合わせただけの曲を本番でやっちゃうってのは、CWMの中ではよくあることなんですよね。でも、そういうやり方を好まない人もいるんだよね、プロの中には。だからハンバートはどっちかなって思ってたんだけど。

佐藤俺らもそっち系(笑)。

篠田それだったらいろいろ出来るなってなってね。

佐藤すぐ新しい事やりたがるから。ひとつカタチになったら、それはもういいから次いこうって感じで。

篠田話が前後しちゃうけど、その信頼関係みたいのが出来たのは、やっぱり一緒にレコーディングしたことが大きかったかなって。俺らにとっても、心が震えるぐらいに特別な時間が流れたっていうか。

佐藤幸せな時間だったよね。

篠田そう思える録音が出来た瞬間が何度もあって。本当にレコーディングで手応えがあったから、そこでハンバート側もいろいろ出来るんじゃないかって信頼してくれたんじゃないかなって思う。ライヴだと、いい時も悪い時もあるからね。

佐藤そうだね。ここまで詰められたことで、ひとつ先のステップが見えたていうのはあるね。

篠田一発録りでやって、それがさらにいい方向へ後押ししたっていうか。何か違うことやろうよっていう感じになったね。

佐藤一発取りでサウンドも演奏もいろんなこと含めて、これ一番良かったんじゃないかなっていうのが自然に思えた。それでどんどん楽しくなっていって、あれはほんと幸せだったな。

──レコーディングの作業でそういう下地を作れて、ツアーに出たっていうのが良かったっていう。

篠田あれがね。ちょっとしょっぱいレコーディングで終わってたらちょっとね(笑)。手応えあったからな、レコーディング。

──ツアー中に増やした曲でやっててはまった、手応えがあったいうのは。

篠田俺はね。ハンバートの曲の「虎」と「大宴会」。

佐藤ああ~!

山口「大宴会」は大阪と東京のワンマンでしかやってないですね。篠田さんから、意外な曲が提案されたなって思いました。

リキッドルームと梅田クアトロでのワンマンで披露された「大宴会」はハンバート ハンバート2人の演奏にCWMメンバーひとりひとり加わり合奏になっていくという演出をした。photo 後藤渉

佐藤そうそう。三拍子でやろうっていって。

篠田実は、一回やってポシャったんだよね。(笑)

佐藤インストアで一度やったんだけど、それをマコっちゃん(竹内誠)が三拍子があまりに叩けなくて(笑)。

一同(爆笑)

篠田三拍子が数えられないっていう。

佐藤本当に難しかったんだよね。三拍子だとスカ・ビートじゃなくなっちゃうから。

──CWMとハンバートがこれほどまでにいい相性をみせた要因のひとつは、どちらにもサウンドの肝となっているルーツ・ミュージックがあって、そのルーツはそれぞれ違うんだけどが、ルーツを大切にしながら音楽をやっているという姿勢に共通するところが多かったのかなって思うんです。

佐藤そう、ルーツは違うし、元のお手本も違うんだけど、だけどお手本の質感自体は意外と近いから。

篠田時代とか音とかね。

佐藤シャープ過ぎない感じというか、ちょっと濁ってる部分とか、それも、どのあたりぐらいまでがちょうどいいって思える感覚も共通したのが良かったんだよね。そこが合わないと作品としていいものが出来たとしても、こうもピッタリはこないから。

──だからハンバートの音楽を聴いてた人にとっても、CWMのバンド・サウンドはさほど違和感なく聴ける人も多かったんではないかな。

佐藤そうだと思いますよ。もちろん全員とは言わないけど、かなりの割合でそうだったんじゃないかなと思う。僕らはやっぱりいつもは歌が完全に主役で、その歌をいかに伝えるかと思ってサウンドを作っていくと、バンドじゃなく、サポートしてもらってセッションする感じになるから、そうなると演奏的にも、技術的に高いプレイヤーのほうがいいって発想になってくるんですよね。基本的には僕らのノリに合わせてもらう、合わせられるぐらい上手いっていう感じになってしまうんだけれど、ハンバート・ワイズマンに関してはそうじゃない。だからお互いにいいところが出せたと思うんですよね。だって、言うなればバックバンドって考え方で捉えればCWMは上手くないからね(笑)。

篠田(爆笑)いや、そうなんだよ!

佐藤それはね、早めに言っとかないと(笑)。ただ上手いからCWMっていうわけではないんですよ。

篠田そうだね。まあ今でもそうだけど、初期の頃の演奏を聴くと、「これ、よく音源にしたな」って思うもん。

一同(爆笑)

佐藤今回のCWMのベスト盤には、いろいろな時代の音源が入ってるけど、俺もこれはすごいなって思いました(笑)。

長崎でも、はじめた頃が上手くないのは、みんなそうでしょ?

佐藤もちろん、みんなそうですよね。

篠田でも、それでも最低限ってあるじゃん(笑)。俺らの場合、そこも無視してるからね。

一同(爆笑)

佐藤だけど逆に言えば、それでもここまで聴かせるっていうのは、曲がいいってことなんですよ。

長崎すごいフォロー! いい発言いただきました(笑)。

佐藤でも、本当にそうだと思うんですよ。曲は大した事ないのに、演奏が上手だと聴き心地がいいからそれだけで聴けちゃうことってあるんですよね。たとえば、歌だったら歌唱力、バンドだったら演奏力で曲が成立しちゃってるのがよくあるんですよね。今は俺も大人になってきたから、そういうのも好きになってきたんだけど、音楽はじめた頃って、そういうのがすごく嫌いだったから。上手い人たちが集まって作ったものとかは、本当に嫌いだった。

篠田前に良成くんもいってたけど、ジャズミュージシャンがスカをやっても面白くないって。

佐藤そうそう上手いんだけどね。オーセンティック・スカの伝説的なミュージシャンたちの上手さとは、ちょっとベクトルが違うというかね。だからといって、下手な方がいいって言っちゃうと……。

篠田それは演ってるほうが言っちゃダメだからね。だけど俺、若い頃はヘタウマが言いっていっちゃってたね(笑)。ヘタウマっていうのに、ついつい憧れちゃうんだよ……しかし、今回のベスト盤作るにあたって、昔の音源とか聴いちゃうと、よくリリースしたなって(笑)。

佐藤自分の昔の作品を聴き返してもそう思いますよ。ピッチ全然あってねぇ! とかね。よくこの歌でOKだしたなって。そういえば、CWMってメンバーを集めてる話が感動的なんですよね。俺はそれ訊いてビックリしましたよ。

山口良成も、これはすごく感銘受けてたよね。

佐藤後から入って来たキーボードのイッチーさん(市村知之)が、最初はピアノが弾けなかったっていうのも驚愕だった(笑)。

篠田最初、鍵盤出来る人がいるって紹介されて来たのが、イッチーだったんだよね。でも弾かせてみたら何かヘタクソで。

一同(爆笑)

篠田でも、その頃、鍵盤がいるバンドなんてまわりにいなかったし、まぁそんなもんかな~って思って、そのまま入ってもらったんだよ(笑)。だけど、あとで聞いたらドラマみたいな話しで、紙に鍵盤の絵書いて家で練習してたとか言ってて。その頃のイッチーは、貧乏ってイメージしかない(笑)。

一同(爆笑)

CWMマネージャー山田イッチーが言ってたけど、CWMに入る前は篠田くんたちと友達になりたいって思ってたんだって。でも自分はSKA好きでも、おしゃれでもないから、なかなか中に入るような接点が無くて。そしたら鍵盤を探してるって言うから、自分も頑張れば出来るんじゃないかって思って、弾けないのに〈やったこと〉あるって言っちゃたんだって(笑)。

山口バンドに入りたい一心で、そこまでやったんですね……すごくいい話!

佐藤そうそう。このあたりの話って『ハンバート・ワイズマン!』のレコーディングが終わってから訊いたんですよ。そのイッチーさんが、今となってはいい仕事をしてるんですよね。現場でも地味なんだけど、すごくいいプレイしてる。共演して、イッチーさんの素晴らしさがわかった上でのこの話だったから、まさか初心者だったとは! ってビックリしましたね(笑)。

──このあたりのバンド結成当時の秘話は、CWM20周年ベスト盤のライナーノーツに、わりと詳しく記されていますので、気になる方はぜひ読んでいただきたいですね。

山口イッチーさんをはじめ、メンバーみんなでこのバンドであるっていう。CWMは、その必然性の純度がものすごく高いんですよ。

佐藤そう純度が高い! でも、それがあるんだかないんだかわからないまま出発したってのもすごいし、しかもそれを20年も続けるってのがね……なんていうか、頭良かったら続かないですよね。

山口お前それ言い過ぎだよ!

一同(爆笑)

篠田ほんとそうだよ。問題あるヤツばっかなのに、よく続いたと思いますよ。90年代終わりから2000年ぐらいにかけてスカ・ブームが来て、スカ・バンドだけでZepp Tokyoとかでライヴやったりもしたけど、他のスカ・バンドと比べて、明らかに自分たちが一番下手なの。スキャフル・キングとかキャーキャー言われてる中に俺らが出てってヘタクソなスカやってさ。だけど、そういう経験をしたことで、こうなったら長く続けて勝負はそこからだ! っていう気持ちになったんだよね。10年やれば俺らも磨かれて、ちょっとはカッコ良くなるかなって。その時期を待とう! みたいな(笑)。

佐藤そうやって〈待つ〉ってことを出来るっていうのが、バンドを続けるコツだと思うんだけど。いやー、俺もホントにバンドやりたかったんですよね。バンドがやりたくて音楽はじめたようなもんだから。でも、やっぱり、ちょっと待てなかったのと、ちっちゃい頃から下手に楽器をやってたもんだから、そこそこ上手くやれちゃうところもあって。だから待てなかったと思うんですよ、今思うと。

篠田なるほど。俺らは逆に、みんな下手だから待てたのかもしれない。待つしかないって。どう考えたって、楽器的なセンスとか才能がある人たちじゃなかったから。だから他のスカ・バンドがグッと売れて人気が出てる時も、俺らはそういうバンドの良いところ吸収して、そこから10年経って同じ土俵にたてたらいいかなって。もちろん、やっぱり最初の頃は早く売れたいって思ってたし、人気も出て欲しいって思ってたけど、実力がついて来ないからさ(笑)。だから人より10年後をいければいいんじゃないかっていうのが俺の信念なんだよね(笑)。まあ、思ったより時間かかってるけど……20年だから2倍かかってるよね(笑)。

──しかし、これはいい話でしたね。今バンドやってる子たちの励みになるような。

佐藤ホントにそうですよ。

山口続けるっていうのは、本当に難しくて、そこを耐えて続けようなんて言ったって、続けられないもんなんですよ、普通は。だいたい上手くいかないと人のせいにしはじめたりして。

佐藤するね。本当にしちゃうね。

篠田マコっちゃんなんて中学から一緒だから、メンバーだけど友達でもあるし。だから逆に寂しいんだよね、辞められちゃうと。

佐藤ホントに寂しいよね。だってバンドって仲間とはじめるものでしょ。それがバンドの良さだから。

──そういう仲間としての意識や、バンドをはじめた当初の、この音楽が好きだからやってる! っていうような気持ちも、何処かで薄れてきちゃいがちじゃないですか。

佐藤そうですよ。ほとんどが続かないから。また、長く続けてるバンドは仲が悪かったりするからね~(笑)。

山口(西内)徹さん含めて8人ですけど、みんなの楽屋での仲の良さに、ちょっとビックリしましたもん

篠田まあ家族じゃないけど、たとえばマコっちゃんなんか明らかに実の弟よりも長い時間を一緒に過ごしているわけで。プロになろうって意識で集まったメンバーだったらそんなに長く続かなかったと思うね。

──バンドの初期衝動って言ったら簡単だけど、そういう感覚が未だに続いている感じっていうのはあるんでしょうね。

佐藤そのバンド感が奇跡的に塊としてあるっていうのが、最初にもらった「おなじ話」のオケの出来上がりっぷりに表れてて。もう何も言う事はなくて、後は歌を乗せるだけだったからね。今までバンド作っちゃ上手くいかなかった俺ですけど、本当にバンドのレコードのサウンドのがカッコいいと思ってやってるのに、バンドを組んでない以上サウンド自体はバンド・サウンドにならないんですよ。それは上手い人を連れて来たりとか、自分のアレンジを具体的にこうしたいと明確に伝えようと、何をしようと近づかない部分は近づかないんですよ。俺らも今年で15年やってるけど、やっぱり近づけないところはあって。

篠田でも、ハンバートでいえば、(佐野)遊穂ちゃんと良成くんの2人の関係っていうのは、これこそがバンドじゃない?

佐藤そう、僕らにとってはそこがバンドなんですよ。俺たちのバンドの単位は、俺と遊穂とマネージャーも含めて、3人で成り立ってるものだから。音に関しては俺一人だけど、それ以外の歌とチームでやっているバンドだと思ってやってますね。

篠田やっぱりさ、ハンバートとか売れている人たちに言っちゃ悪いけど、他のに比べたら音に味があるっていうかさ。

佐藤それも時間なんですよね。俺らも本当になかなか売れなくて……何か上手いことおしゃれ感というか、今これやったら面白いっていうサウンドを取り込んでたり、上手いことバンド・サウンドと歌が共存してたりする音楽を聴いて、しかもそれが自分たちよりもはるかに人気があったりすると悔しくてね。なんとか出来ねぇかな~って思うことは何度もあったんですよ。だけど、これを解決出来るのは時間しかないなって。だから遊穂と2人でやるものに関しては、ある意味CWMと同じで、形として独特のものにようやく固まってきたと思うようになれたのは、本当にここ最近ですね。

篠田それは、自分たちにとって確実に財産になってるよね。

佐藤しかし、こんなにいい話が沢山あるのに、ひとつだけ残念なのが……『ハンバート・ワイズマン!』のCDが、バカ売れするかと思ったら、それがそうでもなかったっていう(笑)。

一同(爆笑)

佐藤話をする度に心残りですよ。まあそれでいいのかな(笑)。

篠田そうだね。でもさ、今でも好きで聴いてますって人多いから。長く売れていければなって。

山田 だってさ、やりきった感も特にないしね。またやるんでしょ(笑)

長崎また次やったときは上積みがあるはずですからね。

篠田まあ、無理してすぐにやらなくてもいいし。

山田そうそう50歳になったからやりますみたいなさ。

佐藤50歳、いいですね。

山口それはちょっと先すぎるな(笑)。

篠田でも、いろんな形でやれると思う。ハンバートじゃなくても良成くんにきてもらって歌ってもらってもいいし。

佐藤そうだね。もうそれも自然に出来るしね。

──では、最後に良成さんから20周年を迎えたCWMに一言贈るとすると?

佐藤やっぱり続けてもらう事じゃないですかね。続けてもらわないと、俺らもハンバート・ワイズマンが出来ないし(笑)。結局ね、ハンバートがスカを別のバンドとやるってことは無いですから。それが一番ありえない事なんですよ。「おなじ話」のロックステディやろうよってことになって、マコっちゃんがバンド辞めてたら、もう「おなじ話」は出来ないですからね。

篠田そういってもらえるのが、やっぱ一番嬉しいね。なんかね、マコっちゃんてドラムがいいっていうよりも、そういう人に愛される才能あるみたいで……。

佐藤いやいや、ドラムがいいんすよ!(笑)。

構成/宮内 健(ramblin')
取材協力/bar COSHARI

ハンバート・ワイズマン!
ハンバート ハンバート×COOL WISE MAN

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